スポーツ現場では、監督や選手は勝負に徹するため、選手に強さと速さ、高いパフォーマンスを求める。メディカルスタッフは傷害が発生した後に活躍するが、アスレティックトレーナー(AT)は選手の怪我の予防が主たる目的である。
そして、怪我をしない体こそ、高いパフォーマンスを発揮できるのである。
特に、バレーボールやバスケットボールでは高さ・速さとともに空中バランスが求められる。
試合中、選手が俊敏に反応するためにはパワーバランスが必要である。
パワーバランスは先ずパワーポジションが作られねばならない。パワーポジションはパワーハウスに力がないとできないのである。
Power position:力を発揮するための姿勢・構えであり、獲物を狙う動物などに見られる次の動作に対する準備状態である。
Power House:人間の中心部。軸、重心。体幹(コアともいう)、トルソ。武道の世界での胴体といわれる部分に近い。臍下丹田。
パワーポジションの獲得のためには、骨盤帯の安定性が重要である。
そのためには、インナーユニットへの意識を高め、アウターユニットへの連動(運動連鎖)をしてゆくことである。
Inner Units:腹圧を上げるために必要な筋群。4つの筋で成り立つ。 骨盤底の筋(肛門挙筋)・腹横筋・多裂筋・横隔膜
Outer Units:インナーユニットの筋群からつながる筋群・靭帯・関節の集団。姿勢を維持し、バランスを保つ。 すなわち、インナーユニット、特に腹横筋の収縮は閉鎖力を強化し、充分な力を発揮する。
そしてパワーハウス(人間の中心部)の機能を維持・強化することをコア・コンディショニングという。
昔から多くの方法が考えられてきた。骨盤牽引やPNF、バランスボール、腰痛体操などである。
インナーユニットからアウターユニットへの連動が上手く行われないときに、選手は怪我をするし、怪我からの回復が障害されると考えられている。
これをkinetic chain dysfunction(動作機能不全)ともいう。
Kinetic chain dysfunction:体全体のバランスが崩れ全体として機能していない状態。
対策としては、kinetic chainを正しく評価し、あわせてcoreを評価する。
大概は、コアが弱くなっている、筋力不足、筋力アンバランス、不良姿勢などである。
トレーナーは選手一人ひとりのkinetic chainを把握し、弱点を克服するようにトレーニングプログラムを考える。プログラムは選手の評価にもなるし、訓練にもなるように作られる。
|